韮崎市民俗資料館ブログ〜「にらみん」のお散歩日記〜
「にらみん」は韮崎市民俗資料館のニックネームです。伝えたいな~、このまちのいろんなトコやコト♪
たいへんお待たせいたしました。
中央市豊富郷土資料館のまゆこさんに教えていただく「折藁蔟(おりわらまぶし)」の作り方、いよいよスタートです♪

とはいえ、そもそも「蔟(まぶし)」って何なのでしょう?
それを知らなければ、今から何を作ろうとしているのかが分かりませんよね…

そこで、まずはプロローグとして、蔟って何なの!?というところから、お話したいと思います。

蚕は4回の脱皮を経て成長すると、糸を吐いて繭を作ろうとします。
でも、何〜にもない平らな場所では繭を作ることができません。
吐き出した糸をからめて繭を形作っていくための、いわば「枠」が必要なのです。

その「枠」のことを「蔟(まぶし)」と言います。
「まぶし」の他、「もず」「しゅく」「上蔟器(じょうぞくき)」などと呼ばれることもあります。
野生の蚕であれば自然に生えている枝や葉を利用して繭を形成しますが、養蚕においては、繭を張ろうとする段階まで蚕が成長したら、人為的に作った枠=蔟の中に蚕を移してあげる作業が必要になります。

蔟の材質や形は、時代によって大きく異なります。
豊富郷土資料館の2階に行くと、養蚕をしている部屋の様子が実物大のジオラマで分かりやすく展示されており、蔟の変遷が一目瞭然です!
(デキル養蚕家のお嫁さん「富子さん」の蚕棚をご覧ください)

以下でご紹介する写真は、豊富郷土資料館の2階展示室のジオラマを撮影させて頂いたものです。

蔟の古い形態は、葉を落とした木の枝を束ねた「粗朶(そだ)蔟」というものです。「朶」というのは「枝」の意味です。
粗朶蔟に移された蚕は、枝と枝の間にできた空間に繭を作ります。

粗朶蔟
粗朶蔟の様子













枝と枝の隙間に繭を作ります












粗朶蔟は江戸時代以前から昭和時代まで非常に長い間使われました。
身近にある木の枝で出来ますから、材料には事欠きませんものね。

明治時代になると、同じく身近な材料で出来る「折藁蔟」が登場し、粗朶蔟と並んで使われるようになりました。
今回、にらみんが作ろうとしているのが、この「折藁蔟」です!

折藁蔟は、ひとことで言うと「藁をジグザグに折り曲げたもの」です。
使う前は、広がらないよう全体を束ねた状態で保管しておきます。

使う前の折藁蔟
折藁蔟(たたんだ状態)












たくさん作って積み重ね、吊るして置いておきます。
折藁蔟は吊るして保管していました













そしていざ使うときには、アコーディオンのように広げて、蚕の上にかぶせます。
折藁蔟












開くと三角形の空間が連続して現れますので、蚕はそこに繭を張ります。
蔟の上には、折らない状態のわらもパラパラと適度に置いておきます。
蚕はこのまっすぐな藁の上を伝って移動することができます。
蔟の上には藁が渡してあります











折藁蔟は身近にある藁で作れるため安価ですし、農閑期に大量に作り置きしておくこともできたので重宝されました。
はじめは竹べらなどで藁を曲げて作っていましたが、大正時代からは折藁蔟を作る専用の機械が現れました(今回使うのはこの機械です)。
便利な折藁蔟ですが、藁を折り曲げただけのものですから潰れやすく、広げるのに手間や労力がかかるというデメリットもありました。

そこで、大正時代に入って折藁蔟にさらなる改良を加えた「改良折藁蔟」が開発されます。
折藁蔟のジグザグの頂点の部分に数本の藁を渡し、紐や針金などで結わえたものです。

改良折藁蔟
改良藁蔟の説明図











これならジグザグの部分が潰れにくいですし、アコーディオン状の開閉もすばやくできます!空間も比較的均一なので繭の大きさも従来より揃いやすくなりました。
それに、画期的だったのは「折りたたんで再利用が出来る」という点です。
(粗朶蔟や従来の折藁蔟は使い捨てでした)

しかし、改良折藁蔟にもまだ欠点がありました。
「出来た繭を取り出すのに手間がかかる」ということです。

それをクリアし、現代まで使われる見事なロングライフデザインとなったのが「回転蔟」です。
ボール紙を組み合わせて出来た箱で、均一な大きさの区画に仕切られています。これを吊り下げて使います。

回転蔟
回転蔟












蚕は上へ上へ登って繭を作ろうとする性質があるので、まずは上の区画が埋まっていきます。
すると重みで蔟が回転し、今度は空の区画が上に来るようになります。このため、蔟全体にくまなく繭が張られるのです。何と合理的な!!

しかも、これなら繭の周りに何も付いていないので枠から外すのも楽です。

回転蔟はボール紙なので吸湿性がありますし、蚕は排泄物を回転蔟の外に向けて排出するので、清潔で湿気りません(良質な繭を得るためには多湿は避けなくてはなりません)。
ボール紙で安価に大量生産ができ、均一な大きさの繭が収穫できるなど、メリットがたくさんありました。

回転蔟が全国的に普及するのは昭和30年代ですが、開発されたのは大正時代で、しかもなんと山梨の人が発明したのです!
回転蔟の特許は、山梨県竜王村(いまの甲斐市)の斎藤直恵さんが大正13〜15年の間に取得しました。山梨県内では昭和15年には養蚕農家の半数がすでに使っていたそうです。

もちろん、回転蔟の普及によって従来の折藁蔟が全く使われなくなってしまった訳ではありません。
蚕が増えて回転蔟が足りない!というような場合には、折藁蔟機を使って藁を折って蔟を増産したそうです。

私がまゆこさんに蔟づくりを教わって帰った日、にらみんのロビーで蔟折機を出して復習していたら、60才くらいのお客さんに「もず折るやつじゃんけ!懐かしいねえ、やったよ!」と声を掛けられました。
その方も、まゆこさんから伺ったのとまさに同じお話をしてくれて、「回転もずが足りなくなった時にこれを使って折ったよ。祖父さんがやってたけど、俺もやりたくて手伝った」そうです。
まさに生きたお話を伺えてうれしかったです。

プロローグが大分長くなってしまいましたが、蔟がどんな役割をするものなのか、おおまかに把握していただけましたでしょうか…?
では、次回からやっと(汗)、実際に藁を折った様子をレポートします。
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